予断で叩くのはやめよう

京教大生による集団強姦被疑事件について。

酒に酔って抵抗できない女子大生を集団で暴行したとして、集団準強姦容疑で京都府警に逮捕された京都教育大の男子学生6人について、京都地検は22日、処分保留で全員を釈放した。
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009062201000446.html

http://www.asahi.com/national/update/0622/OSK200906220070.html
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090622/trl0906221704005-n1.htm
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090623k0000m040013000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090622-OYT1T00804.htm

kohgethu よく判らないんだけど、示談ってことは、こいつら教師になれちゃうの?!それじゃまずいんじゃね??
anigoka 獣は野に放たれた こりゃなんらかのパワーが働いた系だな
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009062201000446.html

triggerhappysundaymorning 非親告罪でも被害者と示談出来れば処分保留に出来ちゃうんだ!被害者脅したもん勝ちだね!
ayako1965 これはひどい, 京都教育大, レイプ, 強姦 示談なんてダメでしょ!レイプ魔が学校の先生になったりしたらどうするのよ?学校に鍵かけても教室の中にいる変質者は防げないでしょ!PTAのモンスターペアレントども、今こそ本気で立ち上がりなさいよ! 2009/06/22
fortune777 これはひどい, 犯罪, 京都教育大, レイプ, 強姦, 事件 示談はまあ良しとしましょう。ただこんな犯罪者を教育者として世の中に出そうとしているこの大学は腐り杉。OBや関係者はもっと活動しなさいよ。って思ったけどOBも関係者もみんなレイプ魔の同類なんだっけこの大学。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090622-00000571-san-soci

加害者被害者を批判してる人はちょっと考えてほしい。
この事件で一般にわかっているのは、示談が成立したことと検察が不起訴としたことだけである。
強姦だったのか、同意があったのか、曖昧なのか、一切明らかでない。

不起訴という判断の適切さは、具体的な事実を見ない限りわからない。捜査自体や、捜査で得た資料がそれだ。
公判を傍聴*1したり当事者が記者会見する以外には、ジャーナリストが取材でもしない限り何もわからないのである。
現時点では、

  • 捜査機関によれば被疑者はこう言っている。
  • 被疑者の弁護人によればこう言っている。

ということはわかっていても、

  • 被疑者が捜査機関にそう言ったか。言ったことは真実か。
  • 被疑者は弁護人に真実を述べたか。

はわかっていない。これらは公判で検察と被疑者が相互に信用性を検証して明らかになるのだ。

じゃあ公判でもなんでもやって国民に情報を明らかにするべきかというと、そうでもない。
性犯罪のような高度に人権が蹂躙される犯罪では、事件の詳細が公開されるのは被害者にとって大変な負担だからだ。
念のため言うと、これは有罪無罪に関係ない。
性犯罪が疑われるような状況において、どう行動したのか、どのような発言をしたのかが、下世話な傍聴人に聴かれるのだ。*2
無残に強姦された状況であれ、同意のもと行為に及んだのであれ、聴かれて愉快であるはずがない。


じゃあ国民は何が起きたか一切タッチできず、捜査の適正さや圧力*3の有無といった問題を何らチェックできないのかというと、そうでもない。
捜査機関の判断は国家公安委員会検察審査会がチェックしており、それらは選挙や裁判、最高裁判事の国民審査、等々の制度を介して間接的に国民がコントロールできるのだ。
全国民が全情報に直接触れずとも、合理的な範囲の人間にチェックさせて情報保護とのバランスをとるという仕組みが用意されているのだ。


もちろん、捜査の不当性が明白な場合には*4、そうした機関に拠らず真相の究明を求めるのも正当で、それを支えるのがジャーナリズムだろう。
今回の事件を考えるに際して必要なのは、そういう仕組みが適切に動いてるか否かをチェックすることである。*5


一番やってはいけないのは、乏しい情報を基に、予断にまみれて当事者を批判するということなのだ。
組織と違って、生身の人間は大勢の攻撃に耐えられるものではないのだ。


こうして考えると、被疑者段階で住所氏名その他を徹底的に暴露する行為は、かなり危険だと思いませんか?いい加減。*6

*1:公判になればダダ漏れなのである。裁判所に行けば、まず確実に何の申請も無く見ず知らずの人の裁判を傍聴できる。当然、直接被害者の表情や肉声に接することもある。

*2:そして2chでアパートの部屋番号まで晒される

*3:加害者からの圧力なんていうのもありうるけど、公判で事件に触れることへの負担や報道を通じて好奇の目に晒される負担が典型的。

*4:汚職の重大な証人が逮捕直前に不審死して自殺として処理されるとか

*5:実を言うとこれが極めて難しい。チェックするには事件の詳細を知らないといけないし、被害者保護の要請と激しく対立するからである。知った上で、出すか出さないか。どういう趣旨でどのような表現で報道するか。そういう綱渡りを適切にこなすのがジャーナリストの役割だ。マスコミは情報を加工せず右から左に流せばいい、下世話な話ならもっといい、という人も相当数いるようだけど。

*6:被疑者段階で早々に各種処分をした機関、今から処分の軽重を考え直すなんていうことも無いんだろうね。